結論:保育士の避難訓練は、子どもを移動させる練習だけではありません。「誰が・どの子どもを・どの経路で・どこまで確認するか」を事前に決め、訓練後に記録して改善することが重要です。
避難経路や点呼方法があいまいなまま訓練を始めると、実際の災害時に職員同士の確認が遅れます。この記事では、保育士がそのまま使える準備・実施・振り返りのチェックリストを紹介します。
保育士の避難訓練で押さえる要点3つ
- 訓練前に役割を具体化する:誘導、最後尾確認、点呼、応急対応、通報・連絡などを決めます。
- 子どもの発達や状態に合わせる:年齢、歩行の可否、午睡中、食事中、園外活動中など、場面ごとの動きを想定します。
- 訓練後に必ず記録と改善を行う:所要時間だけでなく、迷った場所、職員の不足、子どもの反応、設備上の課題を残します。
こども家庭庁は、教育・保育施設等の安全確保について、事故防止や発生時対応のガイドラインを示しています。園の安全計画や消防計画、自治体・消防署の指導内容も確認し、園独自の手順に反映させてください。 ([cfa.go.jp](https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/effort/guideline?utm_source=openai))
今日できる行動:10分で確認すること
- 避難場所までの経路を実際に歩き、通行しにくい場所を1つ確認する。
- クラスの子どもの人数、歩行が難しい子ども、個別配慮が必要な子どもを確認する。
- 点呼表、連絡先、救急用品、防災頭巾などの置き場所を確認する。
- 担任が不在の場合に誰が代わるか、隣のクラスと確認する。
- 前回の訓練記録から、改善されていない項目を1つ選ぶ。
すべてを一度に改善しようとせず、まずは「避難経路」「点呼」「役割分担」の3点をそろえると、訓練の土台を整えやすくなります。
避難訓練とは?保育士が確認したい定義
避難訓練とは、火災、地震などの災害を想定し、子どもと職員が安全な場所へ移動する手順、役割分担、点呼、連絡などを確認する訓練です。
「避難場所まで早く移動すること」だけが目的ではありません。次のような点を確認する機会でもあります。
- 子どもが職員の指示を聞けるか
- 職員が子どもの人数と所在を把握できるか
- 避難経路に危険や障害物がないか
- 防災頭巾、ベビーカー、避難車などを適切に使えるか
- 点呼や所在確認を誰が担当するか
- 保護者への連絡や引き渡しの手順を確認できるか
訓練の回数、実施方法、記録様式などは、施設種別や自治体、消防計画等によって異なる場合があります。法令上の扱いを自己判断せず、園の管理者、自治体、所轄消防署の案内を確認してください。
避難訓練の事前準備チェックリスト
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 想定 | 火災・地震など、今回の災害想定と発生場所を共有している |
| 避難先 | 一次避難場所、状況に応じた次の避難先を確認している |
| 経路 | 避難経路、非常口、階段、門の開閉を確認している |
| 役割 | 先頭、クラス誘導、最後尾、点呼、通報・連絡、救護担当を決めている |
| 子ども | 人数、歩行の可否、個別配慮、午睡中の対応を確認している |
| 設備 | 防災頭巾、避難車、抱っこひも、救急用品、名簿の場所を確認している |
| 連絡 | 園内連絡、保護者連絡、自治体や関係機関への連絡手順を確認している |
| 記録 | 開始時刻、避難完了時刻、人数、課題、改善策の記録担当を決めている |
火災と地震の避難訓練の違い
同じ「避難」でも、災害の種類によって初動や注意点は異なります。以下は一般的な整理です。実際の対応は、園のマニュアルや消防計画を優先してください。
| 項目 | 火災 | 地震 |
|---|---|---|
| 初動 | 煙や火元から離れ、職員の指示で避難する | まず身を守り、揺れが収まった後の安全を確認する |
| 避難時の注意 | 煙の状況、低い姿勢、火元と反対方向を確認する | 落下物、ガラス、壁や設備の損傷を確認する |
| 持ち物 | 原則として子どもの避難を優先し、持ち出しは園の手順に従う | 持ち出しより、頭部保護と安全確認を優先する |
| 確認事項 | 室内に残っている子どもがいないか確認する | 余震、建物の損傷、津波や土砂災害の可能性を確認する |
こども家庭庁の資料では、災害安全について、訓練の合図、避難方法、職員の指示に従うことなどを年齢や発達に応じて確認する例が示されています。園児に伝える内容は、長い説明よりも短い言葉と実際の動作で統一するとよいでしょう。 ([cfa.go.jp](https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c9e1a6a-698b-4f73-a402-d3cc3fee4f07/e9d523f5/20230930_policies_kokoseido_law_jimurenraku_49.pdf?utm_source=openai))
当日の進め方:保育士の基本手順
1. 訓練開始前に人数と体調を確認する
開始直前の在園児数を把握します。欠席、早退、別室利用、トイレ、看護対応中の子どもがいないかも確認します。
2. 合図と短い声かけで動く
声かけは「先生のところに集まります」「頭を守ります」「走りません」など、短く具体的にします。子どもを急がせるあまり、押す・引っ張るなどの危険な誘導にならないよう注意します。
3. 移動中は前後を確認する
先頭の職員は経路の安全を確認し、最後尾の職員は室内やトイレなどに子どもが残っていないか確認します。クラス単位で移動する場合も、職員同士が互いの位置を把握します。
4. 避難先で点呼する
避難先では、名簿や人数表を使って点呼します。「人数が合っているか」だけでなく、名前、所在、けがや体調不良の有無を確認します。
5. 訓練終了後にその場でメモする
時間が経つと、どこで迷ったか、どの声かけが届かなかったかを忘れやすくなります。終了直後に、職員から気づきを集めます。
具体例:午睡中に地震を想定した場合
午睡中の訓練では、通常の活動中とは異なる準備が必要です。例えば、次のように整理します。
- 揺れを想定し、子どもの頭や身体を守る。
- 職員が子どもの人数と所在を確認する。
- 避難経路に落下物やガラスがないか確認する。
- 歩行できる子どもと、抱っこ・避難車などの援助が必要な子どもを分けて対応する。
- 避難先で点呼し、名簿と照合する。
実際の災害では、建物の損傷や地域の危険によって最適な行動が変わります。津波、土砂災害、河川の氾濫などの危険がある地域では、地域のハザードマップや自治体の避難情報も確認してください。
訓練後の記録に入れる項目
- 実施日、時間、想定した災害
- 参加した子どもと職員の人数
- 開始時刻、避難開始時刻、避難完了時刻
- 避難経路と避難先
- 子どもの様子や反応
- 職員の動きでうまくいった点
- 迷った点、危険を感じた点
- 設備・物品・配置上の課題
- 次回までに行う改善策と担当者
記録は「問題なく終了」だけで終わらせず、次の行動につながるように書きます。例えば、「避難車を出すまでに時間がかかった。保管場所を見直し、次回は2名で搬出する」のように、課題・改善策・担当を具体化します。
事故やけがが発生した場合の事実整理や報告については、保育士の事故報告書の書き方|事実整理と記入例も参考にしてください。
また、日常の安全確認を見直すときは、保育士の午睡チェック方法|確認項目・記録例と事故防止の手順も役立ちます。
避難訓練が形だけにならない改善方法
- 毎回同じ時間帯にしない:午睡中、食事中、自由遊び中など、異なる場面を想定する。
- 一部の役割を入れ替える:担任不在時でも対応できるよう、複数の職員が手順を理解する。
- 実際の経路を使う:訓練時だけ開ける扉や、普段使わない経路だけに頼らない。
- 子どもの反応を記録する:泣いた、動けなかった、指示が届かなかったなど、次の援助につなげる。
- 改善策に期限をつける:「確認する」ではなく、「〇月〇日までに避難車の位置を見直す」と書く。
FAQ
Q1. 避難訓練では、毎回同じ避難経路を使ってもよいですか?
A. 実際の災害では、火元、建物の損傷、煙、浸水などによって経路が使えない可能性があります。基本経路を確認したうえで、代替経路や避難先も園のマニュアル・消防計画に沿って確認してください。地域や施設によって適切な方法が異なるため、管理者や所轄消防署への確認が必要です。
Q2. 避難訓練で子どもが泣いてしまった場合はどうしますか?
A. 無理に泣き止ませるのではなく、職員がそばにつき、短い言葉で安心できるよう声をかけます。訓練後は、どの合図や場面で不安が強くなったのかを記録し、事前説明、音量、職員配置などを見直します。
Q3. 避難訓練の記録はどこまで詳しく書けばよいですか?
A. 園の指定様式がある場合はそれを優先します。少なくとも、実施日時、想定、参加者、避難経路、点呼結果、所要時間、課題、改善策、担当者は残せるとよいでしょう。法令や自治体の記録要件は地域・施設によって異なるため、管理者や自治体に確認してください。
まとめ:避難訓練は「準備・点呼・改善」で安全につなげる
保育士の避難訓練で重要なのは、速さだけではありません。次の3点を毎回確認しましょう。
- 事前に、想定・避難経路・役割分担を決める
- 当日は、子どもの安全確保と点呼を優先する
- 終了後は、課題を記録し、次回までの改善策を決める
避難訓練の内容は、園の設備、地域の災害リスク、子どもの年齢や人数によって変わります。この記事のチェックリストをたたき台にしながら、園の安全計画、消防計画、自治体や消防署の指導に合わせて調整してください。
参照した公式情報
- こども家庭庁|保育
- こども家庭庁|教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン
- こども家庭庁|保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部における安全管理の徹底について
- 消防庁|地震・津波等を想定した地域の防災・避難に関する資料
更新日:2026年9月22日
著者:しょぼい園長/先生のぐち編集部


コメント