保護者から「相手の子には、どんな指導をしたのですか」と聞かれ、答え方に迷うことがあります。相手の児童生徒の情報を伝えてよいか即答できないときは、その場で説明を決めず、相談内容を受け止めたうえで管理職と回答範囲を確認しましょう。
大切なのは、相手の子の個別情報を安易に伝えないことと、相談した保護者に必要な説明まで拒まないことの両立です。
まず押さえたい要点3つ
- 相手の児童生徒に関する個別の指導内容は、その場で答えない。氏名を伏せても、状況から本人が分かる情報があります。回答の可否や範囲は、学校種や設置者のルール、事案の内容を確認して判断します。
- 相談した保護者の子どもについては、確認できた事実と学校の対応を分けて説明する。「個人情報なので何も話せません」と一括りにせず、本人の安全や今後の支援について、学校として伝えられることを確認します。
- 判断に迷う段階で管理職へ共有する。相手の子への処分を求められた、説明への不満が強い、同じ訴えが続いているなどの場合は、担任だけで回答を抱えません。
個人情報保護委員会は、学校業務で扱う児童生徒の氏名、成績、健康情報などを個人情報の例として示しています。ただし、何をどこまで伝えられるかは、情報の内容や学校の設置者、事案の事情によって異なります。個別の回答は学校の管理職・設置者に確認してください。個人情報保護委員会の教職員向け資料
今日できること:質問を「相手の子の情報」と「自分の子への対応」に分ける
返答を急がず、保護者が知りたいことを二つに分けてメモします。たとえば「相手の子は何をしたか、どんな指導を受けたか」は相手の児童生徒に関する質問です。一方、「自分の子どもは安全に過ごせるのか」「学校は今後どう見守るのか」は、相談した保護者自身が確認したい事項です。
この区別をすると、個別情報を答えられない場合でも、保護者の心配に対して学校が確認・説明できる項目を探しやすくなります。
聞かれた内容ごとに、答え方を整理する
| 聞かれたこと | その場での基本対応 | 確認すること |
|---|---|---|
| 「相手の子にどんな指導をしましたか」 | 個別の指導内容を即答せず、確認して返答する旨を伝える | 管理職・設置者に、共有できる範囲と説明方法を確認 |
| 「うちの子は安全に過ごせますか」 | 心配を受け止め、現時点で確認できている事実と今後の見守りを分けて説明する | 事実確認の状況、具体的な安全配慮、連絡方法 |
| 「何が起きたのか詳しく知りたい」 | 確認できた事実、まだ確認中の点、今後の確認手順を分けて伝える | 当事者への聞き取り状況、記録、校内の対応方針 |
| 「相手の子を処分してほしい」 | 要望を記録し、処分の約束や評価をその場でしない | 学校の指導方針と権限、事案の事実、管理職との対応分担 |
表は対応を考えるための目安です。「この情報は必ず伝えられる/必ず伝えられない」と一律に決めるものではありません。学校の個人情報保護ルールや設置者の方針を優先してください。
電話・面談で使える例文
相手の子への指導内容を聞かれたとき
「ご心配なお気持ちと、学校に確認されたい点を受け止めました。相手のお子さんに関する個別の指導内容は、この場ではお伝えできる範囲を判断できないため、管理職と確認します。そのうえで、お子さんの安全や今後の学校での対応について、学校からお伝えできることを整理してご連絡します。」
「何も答えられません」と会話を閉じるのではなく、確認後に何を説明するのかを具体化します。回答時期を約束する場合は、校内で実際に確認できる期限を管理職と相談してから伝えます。
自分の子どもの安全について聞かれたとき
「お子さんが安心して過ごせるか、ご心配なのですね。現時点で確認できていることは〇〇です。今後の見守りや連絡方法について、管理職と確認して、学校としてお伝えします。まだ確認できていない点は、確認中であることも含めてご説明します。」
事実が確定していない場合に、推測を事実のように伝えないことが重要です。確認中の事項は「確認中」と明確にし、誰が何を確認するかを校内でそろえます。
管理職に共有するときの確認表
- 保護者が伝えた内容を、評価や推測と分けて記録したか
- 保護者が求めていることを、事実確認・安全確保・説明・処分要望などに整理したか
- 相手の児童生徒を特定できる情報や、伝達に注意が必要な情報を区別したか
- 自分の子どもについて、学校が確認・説明できる事実と未確認事項を分けたか
- 誰が保護者へ返答するか、返答の時期や方法を管理職と決めたか
- 同様の連絡が繰り返されている、威圧的な言動がある、児童生徒の安全に関わるなど、追加の支援が必要か確認したか
記録には、日時、連絡方法、保護者の主な発言、確認を求められた事項、こちらが伝えた内容、未確認事項、校内での共有先と次の対応を残します。児童生徒の個人情報を含むため、学校の定めた保管・共有方法に従い、私物端末や個人アカウントへ保存しないでください。
一人で説明を背負わないために
学校の対応に関する苦情や要望は、教員個人の判断だけで処理しないことが大切です。文部科学省は、保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に関する教育委員会の手引き等を紹介しています。まず校長・教頭などの管理職に共有し、学校の手順に沿って必要に応じて設置者にも相談してください。文部科学省:教育委員会等の対応マニュアル・手引き
保護者の正当な心配や相談と、暴言・過度な要求は同じものとして扱わないようにします。内容を丁寧に聞くことと、教員一人で判断や約束をしないことは両立できます。
保護者対応全体の初動、記録、管理職への相談手順を確認したい場合は、教員の保護者クレーム対応|一人で抱えない記録と相談の手順も参考になります。保護者対応そのものが負担になり、気持ちの整理や相談先を知りたいときは、教員の保護者対応がつらいとき|一人で抱えない相談と選択肢をご覧ください。
よくある質問
相手の子に指導したかどうかも、保護者には伝えられませんか?
一律には言えません。相手の児童生徒を特定できる情報や個別の指導内容は、伝達の可否をその場で判断せず、管理職・設置者に確認してください。その一方で、相談した保護者の子どもの安全や、学校が行う見守りなど、説明できる事項がないかもあわせて整理します。
「個人情報なので答えられません」とだけ伝えてよいですか?
それだけで会話を終えると、保護者が確認したい安全面や学校の対応まで伝わらないことがあります。答えられない個別情報と、学校として確認・説明する事項を分け、「確認して学校から説明します」と次の対応を示す方法があります。
保護者から相手の子への処分を強く求められたら、どうすればよいですか?
処分を約束したり、その場で相手の子を評価したりせず、要望を正確に記録して管理職へ共有します。学校の対応方針や説明範囲は、事実確認と校内の手順に基づいて決めます。威圧的な言動が続く場合や安全上の懸念がある場合も、一人で対応を続けず、管理職と学校の危機対応手順を確認してください。
まとめ:相手の子の情報と、自分の子への説明を分ける
相手の児童生徒への指導内容を聞かれたら、即答せず、保護者の要望を記録して管理職に共有します。そのうえで、相手の子に関する個別情報と、相談した子どもの安全や学校の対応について説明できることを分けて整理しましょう。回答範囲に迷う場合は、学校・設置者のルールを確認し、教員一人で決めないことが大切です。
次に確認すること:校内の個人情報取扱ルール、管理職への報告経路、保護者への返答担当者を確認してください。
更新日:2026年11月4日
著者:しょぼい園長/先生のぐち編集部
参照した公的資料
- 文部科学省「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に関する取組について」
- 文部科学省「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求への対応に関する教育委員会における取組について」
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法に関する基礎知識(教育委員会職員・公立学校の教職員向け)」
※この記事は一般的な実務整理です。個人情報の取扱いや保護者への回答は、学校種、設置者、地域の規程、個別の事実関係によって異なる場合があります。実際の対応は管理職・設置者に確認してください。

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