結論:生徒から自傷行為や「死にたい」などの言葉を聞いたら、教員一人で抱え込まず、その場の安全確認、校内共有、事実の記録、専門機関への接続を進めます。秘密を守る約束を優先するのではなく、「命と安全に関わるため、必要な先生と一緒に支える」と説明することが重要です。
文部科学省も、児童生徒が自殺をほのめかしたり、深刻な自傷行為に及んだりする兆候を捉えた場合は、教職員が一人で抱え込まず、校長をリーダーとする校内連携型の危機対応を行うよう示しています。学校だけで判断せず、教育委員会、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、医療などとの連携を検討します。([mext.go.jp](https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00033.htm?utm_source=openai))
この記事の要点3つ
- 安全確認を最優先にする:今この場で一人にしてよい状態か、けがや緊急性がないかを確認します。
- 担任だけで対応しない:管理職、養護教諭、教育相談担当、スクールカウンセラーなどへ速やかに共有します。
- 言葉と事実を分けて記録する:生徒の発言、確認した状況、対応者、連絡先、次の確認予定を時系列で残します。
自傷・希死念慮の定義
自傷とは、自分の身体を傷つける行為を指します。ただし、本人に自殺の意図があるかどうかは、外見や一度の発言だけでは教員が判断できません。
希死念慮とは、「消えたい」「死にたい」「いなくなりたい」など、自分の死について考えたり、口にしたりする状態を指します。冗談のように聞こえる場合でも、深刻さを決めつけず、落ち着いて確認します。
診断や危険度の判定は教員の役割ではありません。学校の危機対応マニュアル、管理職の指示、医療・相談機関の専門的判断を確認してください。
今日できる行動
- 校内の危機対応マニュアルと緊急連絡網の場所を確認する。
- 管理職、養護教諭、教育相談担当者に「自傷・希死念慮の相談を受けた場合の共有先」を確認する。
- 相談を受けたときに記録する様式を準備する。
- 相談室など、他の児童生徒に聞かれにくい場所で話せる体制を確認する。
- 緊急時に保護者、医療機関、警察、消防などへ連絡する判断者を明確にする。
初期対応チェックリスト
| 段階 | 確認すること | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 1. その場 | けが、出血、意識状態、極端な混乱などはないか | 緊急性が疑われる場合は、学校の手順に従い、必要な救急要請や管理職への連絡を行う。迷う場合は一人で判断しない。 |
| 2. 安全 | 一人にしてよい状態か、危険物や危険な場所が近くにないか | 生徒を責めず、可能な範囲で安全な場所へ移動する。対応者を増やし、単独対応を避ける。 |
| 3. 聞き取り | 何があったか、いつからか、今の気持ちはどうか | 誘導尋問や詰問を避け、本人の言葉を確認する。詳細な方法や手段を教員が掘り下げすぎない。 |
| 4. 共有 | 管理職、養護教諭、教育相談担当者など | 「様子見」にせず、相談を受けた当日中の共有を基本に、緊急度に応じて直ちに報告する。 |
| 5. 記録 | 発言、時刻、場所、同席者、対応、連絡先 | 評価や推測ではなく、確認できた事実と本人の発言を分けて記載する。 |
| 6. 継続支援 | 次に誰が、いつ、どの方法で様子を確認するか | 担当者と期限を決め、支援が途切れないよう引き継ぐ。長期休業中も必要な確認方法を校内で検討する。 |
生徒への声かけ例
相談を受けたときは、すぐに励ましたり、理由を問い詰めたりするよりも、話してくれたことを受け止めます。
- 「話してくれてありがとう。あなたの安全に関わることだから、一緒に支える先生にも相談したい」
- 「今、この場所で安全に過ごせそうか確認させてください」
- 「全部を一度に話さなくても大丈夫です。今わかる範囲で聞かせてください」
- 「私だけで判断せず、養護の先生や管理職と一緒に次の対応を考えます」
一方で、「絶対に誰にも言わない」「そんなことを考えてはいけない」「みんな大変だよ」といった約束や否定は避けます。秘密保持が安全確保より優先されるとは限らないためです。
具体例:放課後に「消えたい」と言われた場合
放課後、生徒から「最近、自分がいないほうがいい」「消えたい」と言われたとします。
- 人目が少なく、かつ教員が一人きりにならない場所へ移動する。
- 「今すぐ自分を傷つける危険があるか」「一人で帰宅して安全か」を、落ち着いて確認する。
- 生徒を一人にせず、管理職と養護教諭へ直ちに共有する。
- 保護者への連絡や医療・相談機関への接続について、校内の責任者と判断する。
- 生徒の発言を可能な限りそのまま記録し、誰がいつ何をしたかを残す。
この例で、教員が「自殺の意思はない」と決めつけたり、保護者への連絡を独断で遅らせたりするのは適切ではありません。緊急性や家庭状況によって対応が異なるため、学校の手順と専門職の助言を確認してください。
避けたい対応
- 担任だけで抱え、「明日まで様子を見る」と判断する。
- 「約束して」と言って、教員との口約束だけで安全を確保しようとする。
- 本人の前で、複数の教職員が原因や家庭事情を推測する。
- 他の生徒に詳しい内容を聞き回る。
- 記録に「不安定」「大げさ」など、根拠が不明確な評価語だけを書く。
関連する校内対応も確認する
自傷や希死念慮の背景に、いじめ、欠席の長期化、家庭の困りごと、友人関係などが関係している場合があります。ただし、原因を一つに決めつけず、必要な支援を並行して検討します。
FAQ
Q1. 生徒から「誰にも言わないで」と頼まれたら?
安全に関わる可能性があるため、秘密を約束しないでください。「あなたを守るために、必要な先生と一緒に考える」と説明し、管理職や養護教諭などへ共有します。共有範囲は必要最小限とし、学校の規程に従います。
Q2. 自傷の跡を見つけた場合、詳しく見せてもらうべきですか?
教員が診察や詳細な確認を行うのではなく、けがの状態と緊急性を確認し、必要に応じて養護教諭、管理職、救急などにつなぎます。傷の写真を個人端末で撮影するなど、学校の手順にない対応は避けてください。
Q3. 保護者への連絡は担任が直接してよいですか?
学校の方針や緊急度、家庭状況によって異なります。担任が単独で判断せず、管理職や養護教諭、教育相談担当者と連絡方法・伝える内容・記録方法を確認してください。医療や福祉への相談が必要な場合も、学校の責任者を通じて進めます。
まとめ
教員が生徒の自傷や希死念慮を聞いたときの基本は、安全確認、単独対応を避ける、校内共有、事実の記録、継続支援です。教員だけで危険度を判定したり、原因を解決したりする必要はありません。
緊急性がある、けががある、本人を一人にできないなどの場合は、学校の危機対応手順に従い、管理職や救急を含む関係機関へ速やかに相談してください。自治体や学校ごとに連絡先・様式・判断基準が異なるため、必ず所属校の最新の規程を確認しましょう。
参照した公式情報
更新日:2026年9月27日 著者:しょぼい園長/先生のぐち編集部


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